2017年の香港次期長官選挙で普通選挙を求める人々が、それをシャットアウトした政府への抗議で街の中心部を占拠してはや一週間が過ぎました。政府と彼らのへだたりはいまだ大きく、お互い本当の意味で譲る気配も見せていないため（どちらにも引けない理由がある）、長期化もしくは激しい衝突、それによる経済的損失など、さまざまな懸念が存在している状況ではあります。

自分も去る10月１日、国慶節（中国の建国記念日）で沸く深センを離れ、香港で行われているデモの状況を見て来ましたが、その時はこれといった衝突などはまったくなく、極めて平和的に抗議活動が淡々と行われていました。自分よりも一回りも二回りも若い人たちが自分たちの“国”の将来を憂いて立ち上がっている姿は、一部の人に言わせれば「青臭い行動」なのかもしれませんが（実際そういう参加者も多いことでしょう）、それでも彼らの「何かを変えなければ」という強い思い、そして行動力は尊敬に値すると感じました。

思い返せば2012年の秋、広東省の深センや東莞市で間近に反日デモを目撃し、個人的には中国に対してかなり残念な気持ちを抱きました。それは理由は何にせよ、デモというよりもほぼ暴動だったからです。もしもあの時、今回の香港のように、平和的に行われる反日デモを見ていれば、自分の中国に対する見方は大きく変わっていたかもしれない、“同じ中国人”なのになぜこれほどやり方が違うのか――そんなことを考えながら今回のデモを眺めていました。

「一国二制度」という中国が掲げる理想。聞こえは良いですが、正直、前途多難です。中国共産党側からすれば時間をかけながら二つの制度を溶け込ませていき、最終的に香港や台湾の人たちに自分たちの制度に合わせてもらおうという考えだと思うのですが、普通選挙や報道の自由のように、溶け込ませたくても中々溶け込ませられない“水と油の要素”が実はたくさんあります。そのへんをどのように対処していくのか――その答えの片鱗が今回のデモの結果に垣間見えたとすれば、それはそれで純粋にスゴイことだと思いますが、もしこれといった何かを残せなければ、中国にはより困難な未来が待ち構えることになるでしょう。