それをオーダーすると店から客がいなくなる―――。そんな麻婆豆腐があると聞いて、好奇心に抗えずに行ってきました。
場所は中華料理店「味覚」。最初はお酒と炒め物などで軽くつまんでから、満を持して麻婆豆腐の「激辛」をオーダー。するとどうでしょう。常連は「まじか!」と次々に警戒し始め、店員さんに「作るとき教えて」「持ってくる前に一言かけて」と告げるなど、ただならぬ状況に。なにそれ大げさな……と、その時までは思っていました。
わかりました。麻婆豆腐が席に近づいてくれば近づいてくるほど、辛みの蒸気にのどが圧迫されて、鼻に刺激が集まり、目からは涙が流れるんです。食べてないのに、まだ料理が席に届けられるまでの距離はあるのに辛い(からい)辛い(つらい)。満員だった店内からはお客さんが一切いなくなり、ハンカチで口元を抑えながら避難した人もいて、心の底から謝罪したい気持ちでいっぱいでした。こんな経験初めてです。
蒸気がおさまり、おそるおそる食べてみると、辛みと苦みが強くて、なかなかの玄人の味。嫌いじゃないのですが、あの蒸気を超えないと食べられないのはきついなあと思いつつ完食したのでした。激辛好きの方、ぜひチャレンジしてみてください。粘膜ダイレクトのやばさ、体感できます。